« メディアを軽んじると、お客は離れる | Main | ノートをめぐる冒険 »

2008年12月19日

「甘苦上海」 日経の連載小説はなぜエロ・ファンタジー化するのか?

[エロティーク]

渡辺淳一氏の「愛ルケ」の騒ぎも忘れそうになって油断していたら、
日経新聞の連載小説がまたまたあらぬ方向へ行ってるじゃありませんか。

芥川賞作家であり、芥川賞選考委員でもある高樹のぶ子氏の連載
甘苦上海(がんくうしゃんはい)」のことです。
(※ここで連載が読めます)

もっとも「甘苦上海」を「愛の流刑地」と一緒にしたら、高樹先生に怒られるかもしれません。
渡辺氏の「愛ルケ」の妄想っぷりときたら、そりゃ、あなた!ファンタジー小説の領域。

「…ちょ、ちょっ! そんな都合のいい展開、ありえないから!」

執拗なまでに繰り出されるツッコミポイントの多さは"画期的"とも言えるほどで、
いちいちツッコむことを楽しみとするか、
逆に「はい、はい、これは想像の世界ですからね~」と意識的に流すようにしないと
先に読み進められない作品でした。


「甘苦…」をそんなファンタジー小説と並べて語るのは、本当に恐縮です。
街の描写や登場する人物たちの言葉が、体温や湿度、匂いを放ちます。
よはねは上海に行ったことありませんが、きっとこれがリアルなんだろうなあ、と
感じさせる迫力があります。


高樹先生のブログ「SIA=Soaked in Asia」
(意味は「アジア浸り」ということでしょうか)の説明には

作家高樹のぶ子氏がアジアの文学作品やその作家、
地域の人々との交流を通じて、自身が感じた「アジア」を発信していきます。

とあり、先生がアジアにただならぬ関心を寄せ、
また、日頃から丁寧に取材されていることがわかります。


しかし!
しかし、その綿密な描写に喝采しながらもなお、
「この日経新聞朝刊の連載小説は渡辺先生と同じ地雷を踏んでる」
と指摘しないでいられないところがあります。

物語の核をなす、主人公の恋人の描写です。


このふたつの小説は奇しくも
作家と同じ性別・同年代の主人公が、極端に若い異性と関係する
という、共通点を持っていますが、

その恋人があまりに主人公にとって都合よすぎる

というところまでそっくりなのです。

「愛ルケ」の冬香も、「甘苦」の京も、美化のされ方がハンパありません。
(美化といっても、セックス・アイドルとしての美化なところがポイントです)

雪のような肌をした、
貞淑な妻が作家との情事では異常なまでの痴態を見せる…という冬香。
※男性読者にとってのセックスアイドル像
美しく、理想的な肢体の中に、
得体の知れない狂気と繊細なる悲しみを湛える日本人留学生、京。
※女性読者にとってのセックスアイドル像

…ほうら、ね?
いわゆる「萌え」要素を詰め込んでるというか、
オナニーするときの妄想キャラ設定みたいだと思いませんか?


そして、主人公が恋人とが「やらかす」シーンでは、その妄想が急加速します。
そして、なぜか「エロ・ファンタジー小説」の方に行っちゃってます。


「愛ルケ」ではブランデーの"わかめ酒"なんかが話題になってましたね(涙
そんなの、ありえないだろう、と。
でも、「甘苦」のこのシーンなんか読むと、あの感覚が蘇ってくるのです。

「…ほんとうに、セックスはいいんだよ」
「ミ…」
「紅子さんのココ、いいんだ、自分でわかってる?」
「診断書では…褒められてもいなかったけど」
「入り口に、猫の舌が仕組まれてる」
「…それも診断書には…無かった」

(「甘苦上海」第76回)

ありえね~!


果たしてこの「あまりにわかりやすすぎる」下ネタの仕込みは、
偶然の一致なのでしょうか?
もしかして……この連載コーナーの編集方針では?
なんて勘繰りたくなりませんか?

んっ? 編集方針?
んんっ? 編集部??


さあ、賢明な読者のみなさんならきっとお気づきでしょう。
そうです、あの編集部ならやらかさないわけがありません。
(…と、実はここからわたしの妄想なわけですが)


きっと、こんな会話がされてるに違いないんですよ!

以下、妄想の日経文芸担当編集部の会話

担当  「あ、デスク! …じゃなかった…次長! おひさしぶりです」

次長  「おー、元気そうじゃねぇか。東京はしっかし、寒いな。
      ポコチンがちぢこまっちゃっていけねぇや」

じょろじょろじょろじょろ…

担当  「あ、あはは。相変わらずお元気そうですねぇ。
      ああ、次長ご昇進、おめでとうございます! 
      東京は1年ぶりですか?」

次長  「おうよ、1年でご勘弁していただいたってところよ。
      寒くっても、やっぱ本社がいいってもんだな」

担当  「あ、そういえば高樹先生の連載の件ではありがとうございました」

次長  「あ? あぁ、あぁ、おまえンところのオンナ上司な。あいつ、わかったみたい?」

担当  「はい、次長からのアドバイス、すごく参考になったって喜んでましたよ」

次長  「日経の小説はナ、日本の経済を元気にするエネルギーがなくっちゃダメなんだ。
      社長たちが朝からぐぐっ、と来るコンテンツよ。
      北方先生の連載もよかったなぁ! 
      毎んち支社行くのに「今日も喧嘩(でいり)だ」って気になったぜ。
      改革路線を継続への援護射撃だったんだがな」

担当  「え? あ……は、はい、
      あの連載のころは、まるで自分も喧嘩に強くて、革新的な経営センスのあるオトコ
      になったような気分になりました」

次長  「んだろ? そうなんだよ。
      そういうのが大事なんだよ、経営者のマインドに訴えかけるアトモスフェアってヤツだ。
      でもって、女の時代の高まりを背景に高樹先生にバトンタッチだよ。
      ところで、お前んところのあのオンナはまだ恋人ナシか?」

担当  「え? あ、デスクのことですか?
      まー、アラフォーでデスクまでこなすスーパーレディですからね……。
      ある意味、仕事が恋人なんじゃないですか?」

次長  「よーし、いいぞ。それでこそだナ」

担当  「え? ん? なンすか? 連載の話とデスクのことと、なんか関係ありました?」

次長  「はぁ? なんすかだと? 
      お前ナ~、ほんっとにそんな寝惚けたこと言ってっと、ぶっ殺されるぞ」 

担当  「す、すみません」

次長  「今回の連載の、狙いどころはどこだかわかってんだろ?」

担当  「は、はい。……女性の経営者を元気にしよう、って企画です」

次長  「そうだナ。 …で、それだけだったか?」

担当  「え、えっと……、アジアの熱気と日本のビジネスとの相互作用とギャップが……」

次長  「阿呆! 
      お前のダメさはほんっとに変わってないな。
      オバマの演説聞いてなかなかったのかよ? あン? 
      CHANGE! だ、 CHANGE! 
      チンゲじゃねぇぞ、チェンジっつってたんだぞ、コラ。
      アジアと日本のビジネス云々なんか聞いて社長が燃えるか?」

担当  「え、ええと……」

次長  「ちがうだろ。

      女性経営者を熱くする。

      それと同時に、
      男性経営者も熱くすることができるのかを
      フィジビリティ・スタディする

      …だろ?」

担当  「は?」

次長  「あんだよ、あの女は大事なところを抜かしてんだな。
      渡辺先生の『失楽園』と『愛の流刑地』で図らずも実証されたのは、
      濡れ場のある連載が景気をよくするってことだったろ?

      あのパクリ絵事件のおかげでいい勉強させてもらったわけだよ」

担当  「まあ、偶然という話もありますけどね」

次長  「阿保! あれは偶然じゃねえ。シカケが成功したんだ。
      朝から臍下丹田に気を満たした経営者がはりきったからこそ、
      戦後最長の好景気になったんだ。
      しかしナ、問題もあったわけだよ。
      『愛の流刑地』を『愛ルケ』だとか言っておちょくる奴らや、
      ほら、フェミニストまがいのバアさんたちな」

担当  「次長がデスク時代にぼくに教えてくれた
      "大抗議は、大反響の仲間"って、あれですね」

次長  「一部では不買運動まで起こしかけてた、熱心な婆さんたちもいたわけだ。
      実は、あれはあれで、ヤバい橋だったとわかったわけだ。
      功もあれば罪もある、と。
      そこで考えたンだ。
      女の登場人物を濡れ場の道具にすると、目くじら立てるババアがしゃしゃり出てくる。
      じゃ、男の登場人物を濡れ場の道具にしたらどうた? ってな。」

担当  「は、はぁ~」

次長  「おめぇは鳩か? 豆鉄砲食らってんじゃねぇぞ。
      お前のオンナ上司が教えてくれなくったって、
      それぐらい手前ぇでも気づくだろ?」

担当  「なるほど。たしかに、京が紅子さんのセックスの道具のように扱われてても
      ぜんぜんムカつかないですね」

次長  「それどころか、男としちゃ、ちょっとムラムラっと来るだろ?」

担当  「た、たしかに…
      ぼくも、紅子さんみたいな女性ならいいかもな、なんて…」

次長  「それだ!
      おめぇみてぇに若い女の尻追っかけんのが好きな馬鹿男も、
      高樹先生の筆にかかっちゃ宗旨替え、ってわけだよ」

担当  「じゅ…熟女好きになっちゃいますか?」

次長  「おうよ! 
      高樹先生の瑞々しい筆がいいじゃねえか!
      京の描写なんか、お前ぇ、絶妙だろ? もう女性読者はメロメロらしいぞ。
      あれが、おれっちみたいなリアルな男だったらどうなったと思う?
      あの耽美的な世界は絶対に作れねぇ。
      狂気と悲しさを湛える、ワルで、繊細で、美しい男だからいいんだ。
      ヅカの男役みてぇな、ありそうでありえねぇ男だろ?」

担当  「いや、わかりますけど、それとデスクとはどういう関係が?」

次長  「まだピンとこねぇのか?
      しょうがねぇ奴だな。全部おれに喋らすのかよ? え?
      人事のことだからあんまりでけぇ声じゃ言えねえが、
      そもそもデスクを女にしたのもそこに理由があンだよ。

      女流作家の先生と、濡れ場の打ち合わせできるか? お前?」

担当  「いや……、やれ、と言われればやりますけど…」

次長  「阿呆! 
     お前みたいなの相手に打ち合わせしたら、先生がやりにくいだろ」

担当  「そ、そんなもんスか?」

次長  「女ってのは、女どうしが群れたときに真のエロスを発揮するもんなんだ。
      わかんねぇか?」

担当  「そ、そうかもしれないです」

次長  「えーと、なんだ? ほら。
      いま、しょんべん臭ぇエロまんがが流行ってんだろ?
      女の腐ったようなオンナに…」

担当  「あー、腐女子ですね?」

次長  「そう、それよ!
      女同志の変態同人ナ。
      あれだってそうだろ?

      あと、ベッドで変態ごっこして喜ぶののはたいてい女子校出身者だ。
      杉田玄白のターヘル・アナトミアにも書いてあっただろ?」

担当  「 い、いやー、それは…」

次長  「その日本の由緒正しき学術的考察に基づき、
      日経新聞の日本の景気回復プロジェクトとして投入されたのが、
      お前んトコのオンナデスク、ってわけだよ」

担当  「ま、まじですか?」

次長  「あの女、見るからに欲求不満溜まってそうじゃねぇか。
      ブスってわけじゃねぇし、頭もいい。
      それにエロい話もフツーにわいわいやってるくせに、
      男っ気がねぇ。
      不倫もしてねぇと来てる」

担当  「そ、そんなことまでなんで知ってんですか?
      …ちょ、調査を??」
      
次長  「ったりまえだろ、
      言ってみれば国家プロジェクトみたいなもんだからな」

担当  「うっ、うちの連載小説って、国家…!!むぐむぐっ、おえっ、おえっ」

次長  「阿呆ったれ! 声がでけぇだろ。」 

担当  「す、すみません。 あ、うえー、びっくりした。
      次長、トイレで手ぇ拭いて濡れたハンカチを
      口に突っ込むの、やめてください。おえっ、
      えづきます、吐きそうです」

次長  「ま、こっちの見立て通り、あのデスクが、高樹先生とやってくれてるみてぇだな。
      おかげでいい感じで盛り上がってきてるだろ。
      ヅカの男役みたいな恋人ってのは、
      オレみてぇな紳士からすっと、ちょっと、鼻につくけどよ。

      エロスのレベルで言や、渡辺先生に比肩するってもんだろ?
      高樹先生と、あのオンナとで、もっともっと妄想して
      エロいファンタジーが盛り上がってくれるといいんだがな~」

担当  「ミミズ千匹だか、数の子天井だかの話が出てきましたね。
      最近、堺屋先生や北方先生の作品で免疫が切れかけてたんで、びっくりしました」

次長  「いいだろ、あれ。 なあ?
      ああいう、わかりやすい濡れ場や設定ってのが大事なんだよ。

      女性社長には、愁いのあるホスト張りの京の魅力で、
      男性社長には、紅子の発酵した熟女のエロさで元気になってもらう。

      今度のは誰にも文句言わせねぇ。
      社長も、フェミニストのババアも、朝からぐっと来て元気出すわけだ。

      100年に一度の金融危機だ?
      おもしれぇじゃねえか。
      日本には日経新聞があるってところ見せてやろうじゃねえか? ナ?
      アメリカも、欧州も、他のアジアも出し抜いて、
      ばつーん、とV字回復してやんのよ!
      
      このプロジェクトが成功したら、
      中国、韓国、台湾あたりの経済新聞でも展開するってことになってんだ」

担当  「いや、日本だから許されるんであって、
      アジアの各国がそんなにモラルに奔放ってわけにはいかないんじゃ…
      (ぶつぶつ)」

次長  「俺が担当だったら、紅子に
      『ひぃー、かんにんや、堪忍してぇ』
      って言わせてぇなあ。社長たち、燃えるぜ~」

担当  「そ、それは、団鬼六先生の十八番(オハコ)っす!」

次長  「京が
      『ええか、ええのんか? 最高か?』
      ってのも喜びそうだな。くっくっく」

担当  「それは鶴光師匠!」

次長  「ぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃ言いやがるなあ。
      じゃ、お前ぇはどうなんだ? 腹案あンのか?
      えっ?
      日本の社長たちが熱くなるような濡れ場だぞ、コラ!」

担当  「……」

次長  「あン? なんだと? 聞こえねえだろ」

担当  「わたしを…」

次長  「わたしを?」

担当  「わたしを……殺して」


次長  「お前ぇ、マジでぶっ殺されたいだろ?」
     

以上、妄想終了!

※本エントリーの青地部分は完全なフィクション(妄想)であり、
  実在する企業や個人とは無関係ですのでご了承ください。




Posted by Johane at 2008年12月19日 05:04

Trackback Pings

この記事へのトラックバックは以下のURLにPINGして下さい:
http://www.reona.net/blog/mt-tb.cgi/189


Trackbacks

以下のリストは「甘苦上海」 日経の連載小説はなぜエロ・ファンタジー化するのか?を参照しているWEBLOGへのリンクです:

» 不況の影響がとても気になる「甘苦上海」 from Colorful Days
日経新聞の連載小説「甘苦上海」(がんくうしゃんはい)。楽しみに読んでいます。連載開始から、2ヶ月半。50代のお金持ちの日本人女性と、30代の男性の「援助交... [Read More]

Tracked on 2008年12月23日 07:27


» 本の愛欲文学 from つき指の読書日記
エ・アロール楽天ブックス愛の流刑地(上)楽天ブックス愛の流刑地(下)楽天ブックス 気がついてみると、渡辺淳一の小説はほとんど読んでいる。『失楽園』以来の読... [Read More]

Tracked on 2008年12月27日 05:53


» 「甘苦上海」 朝萌えで日本経済を活性化!妄想編集部 第2回 from よはねのメディアプロデュース魂
以前、「エロ・ファンタジー」と紹介した、 日経新聞朝刊で高樹のぶ子さん連載の小説『甘苦上海』が、ものすごくいい感じになってきました。 主人公の50代女性社... [Read More]

Tracked on 2009年02月06日 22:55



Post a comment




Remember Me?

(you may use HTML tags for style)